Case6
歯肉癌による上顎洞穿孔
 
     

パノラマX線写真

 

左側上顎4、5根尖部から左側上顎7近心部歯槽骨上顎骨は消失し、境界不明瞭なX線透過性の亢進を示している。辺縁部はイレギュラーである。形態は半楕円形で、大きさは長径2.5 cmである。骨吸収に伴い左側上顎5は浮遊歯を呈している。また、骨欠損は歯槽頂部骨で広く、頭側にいくに従って狭くなっている。また、欠損を示す上顎骨には腫瘤陰影を表す軟組織レベルのX線不透過像により置換されている。上顎歯肉悪性腫瘍の顎骨浸潤の所見である。但し、左側上顎洞底及び鼻腔底の不明瞭化はない。また、翼突窩を取り巻く骨及び窩の大きさはintactであり、腫瘍の浸潤は否定である。特に上顎洞に関して、両側頬骨は三角形状に形態が変化し、不透過性の亢進を示している。それに伴いパノラマ無名線は肥厚し不明瞭化を呈している。また両側パノラマ無名線より上顎洞後壁迄は不透過性亢進を示している。同時に両側上顎洞は、不明瞭化している。上記所見は、両側上顎洞根治手術後の正常治癒を示すものである。そのため、左側上顎洞底線は頬骨レベル迄挙上されており、病変との接触はない。
右側下顎6遠心根周囲歯槽骨には瀰漫性のX線不透過像に囲まれたX線透過像を認める。X線透過像は歯槽頂部迄連続している。境界は比較的明瞭である。辺縁性歯周炎と根尖性歯周炎の併発である。
全歯牙周囲の頂部歯槽骨は歯根1/2〜1/3レベルの吸収を示している。但し、両側上下顎大臼歯分岐部にも骨吸収所見を認める。中〜高度の辺縁性歯周炎の所見である。


口内法X線写真



左側上顎4、5根尖部から左側上顎7近心部歯槽骨上顎骨は消失し、境界不明瞭なX線透過性の亢進を示している。辺縁部はイレギュラーである。また、欠損を示す上顎骨には腫瘤陰影を表す軟組織レベルのX線不透過像により置換されている。小臼歯根尖部の腫瘤陰影内に骨小片の残存を示す不透過物を認める。骨吸収に伴い左側上顎5は浮遊歯を呈している。また、骨欠損は歯槽頂部骨で広く、頭側にいくに従って狭くなっている。上顎歯肉悪性腫瘍の顎骨浸潤の所見である。

Waters法X線写真

 
左側上顎小臼歯根尖部から臼歯部歯槽骨相当の左側上顎洞下方に境界不明瞭なX線透過像を認める。そのため頬骨下稜のX線不透過性は軽減している。但し、消失してはいない。両側上顎洞を示す線状影は不明瞭化し、上顎洞は狭小化するとともに形態もはっきりしない。両側頬骨の著明な肥厚を認める。両側上顎洞根治手術後である。
 

P-A view

 
左側上顎小臼歯根尖部から臼歯部歯槽骨に境界不明瞭なX線透過像を認める。大きさは長径2 cm程度である。そのため、頬側歯槽骨は消失し、左側上顎7歯根が露出している。但し、病変と重なる歯根に欠損はない。病変は左側上顎洞底と距離があり、両者の接触は否定である。また、両側上顎洞の壁を表す線状影は不明瞭で、上顎洞相当部はX線不透過性の亢進を示し洞形態は不明瞭化している。両側上顎骨の頬骨突起から頬骨下陵へ連続する彎曲形態の角度は約90°であり、正常より小さくなっている。両側上顎洞根治手術後の所見である。
 

エックス線CT写真


骨モード:
左側上顎小臼歯から大臼歯相当部歯槽骨部を中心として境界不明瞭な不整形骨破壊像を認める。大きさは長径3 cm程度である。同部の頬舌側皮質骨は消失している。消失した骨内に左側上顎5が存在している。左側上顎洞及ぶ鼻腔はintactであり、浸潤所見は認めない。

 



軟組織モード:
左側上顎小臼歯から大臼歯相当部歯槽骨部を中心として境界不明瞭な不整形のsoft tissue density structureを認める。大きさは長径3 cm程度である。Structure全域に渡りほぼ軽度の造影効果を認める。Structureは顎骨内側に浸潤すると同時に外側にも拡がっている。Structureに接する周囲軟組織(表情筋、脂肪)は形態を失い、消失している。左側上顎小臼歯から大臼歯相当部原発の悪性腫瘍の所見である。左側上顎洞及ぶ鼻腔はintactであり、浸潤所見は認めない。
所属リンパ節は、左側顎下腺外側の顎下リンパ節に中心壊死を示す長径にして2.5 cmのものを認める。それ以外に明らかなリンパ節転移を示唆する径、形態及び内部性状を示すものは認めない。

   
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